妹のひとりごと

「おい、何をしているんだ。しまいなさい。」

ここは片田舎の中学校。

私、中学三年生。数学教師に怒られている最中。

嫌いな数学の授業より、気になる推理小説を読んだ方が有意義な時間だと思うんだけど。

 

私は今も、「変わり者」と呼ばれている。もちろん、影で。

物心ついたころから、自分は周りとなんとなく違うな、と思っていた。

でも、自分の思うままに、行動していた。

 

周りは変わり者の私を許さなかった。

持ち物は無くなる、存在を消される、男子と二人きりで話すと相手がからかわれる…

あるあるのオンパレード。

くだらない、と同級生を見下しながら毎日を過ごしていた。

そのくせ、少しでも立ち振る舞いをどうにかしようと奮闘していた。

その結果、私は、嘘が上手くなった。

嘘をつくことに、何の罪悪感も持たなくなった。

 

次の授業。

二人一組でペアになって一つのことを調べ、後日発表するというもの。

今回は初日。

「ペア決めのくじ引きするぞー」

ところどころで不満の声が上がる中、私は一人の男子とペアになった。

ああ、可哀想に。彼は後で、誰かから何かを言われるのだろう。

関係ないけど。

 

「じゃあ、お互いに自己紹介から。はい、スタート」

一度、同じクラスになったことのある男子だけど、話したことはほぼ皆無。

 

先手必勝。変なこと言って印象付ける。

「どうも。1組の――です。最近の悩みは目覚まし時計を三つ使っても起きられないことです。これからよろしく。」

別に、そんなことないんだけど。本当にこういう小さい嘘が上手くなって―

「じゃあ、遠くに目覚まし時計を置けば?」

…こいつ真面目か?取り合うことでもないだろう、今の。

 

これが兄上との出会いだった。もう十年以上も前の話。まさか、こんなに仲良くなるとは思いもよらなかった。