妹のひとりごと3

これは今から何年も前の話。

『あのさ。メアド、変えよう。』
兄上にメールで言われた。
今考えるとちょっとイタいが、私達は当時、所謂ペアアドというやつだった。

『ん?わかった』

変えることに対しての了承なのか、
変えるという意味を了承したのか、
当時の私はちゃんとわかってなかった気がする。

「…って、もうメアド変えたんかい。届かねーし。」

と、呟いた瞬間、携帯が震えた。

『変えたよ〜』

普通、が何かは知らないけど、ペアアドを変えたら、普通は新しいアドレスを教えないで、フェードアウトするんじゃないのか?

…どうやらそうではなかったらしい。
昔から、そう。
いつも、そう。
この人は、大体、常識的じゃない。
それに、たくさん救われることがあった。

高校卒業後、私は上京し、兄上は地元に残り、会うことも少なくなった。
それでも途切れない連絡。
親よりも連絡してるんじゃないか?という頻度だった。

私達にとって、この関係性は「普通」だった。

しかし、他の人にとっては「異常」だった。

兄上の、正確には、"元恋人"の存在が、恋路の邪魔になったこともあった。
でも私は、自分にとって大事なものに対して、優劣はつけられなかった。

新しい恋人が出来る度に、「兄上の存在は隠したほうがいい」という友人達。
でも私には出来なかった。
今の自分を構成するのは、ほとんど兄上に教えてもらっていたから。

身長を気にして猫背気味になっていたのが治りつつあるのも、
人の視線に耐えきれず目を前髪で隠していたのをやめたのも、
今現在仲良くしている友人達、全員と知り合えたきっかけも、

全て兄上のおかげだったから。

「自分の大切なものを一緒に大切にしてくれる人と巡り合う」なんて、そんな夢みたいなことを本気で思っていた。

「こんにちは。これからよろしくお願いします。」

それは、神のみぞ知る。